遺言の内容に不服がある場合の対応
遺言の内容
相続の場で遺言が残されていれば万事解決うまくいく……といかないのが現実です。
例えば、法律によって正式な相続人だと認められているのに、父の死後に公表された遺言では、自分には一切の財産を分け与えないと書かれていた……。
こんなケースもありえないことではないでしょう。金銭面だけでなく、精神面でも多大なるショックを受けるでしょう。
このような遺言の内容に納得がいかない場合には司法の手を借りることができます。
遺留分とは
一切の財産を相続させない旨が遺言書に書かれていたとしても、法定相続人には最低限相続できる割合が保証されています。
これが「遺留分」と呼ばれるものです。遺留分は通常の法定相続分の半分に相当します
例えば父が亡くなり、母と3人兄弟が遺産を分けるとします。
まず遺産の2分の1は母へわたり、残りの2分の1を3兄弟で均等に分け合うことになります。つまり「2分の1×3分の1=6分の1」ずつ遺産を得られます。
しかし、もしも「長男だけに遺産をすべて相続させる」という遺言が残されていた場合であっても、その2分の1、つまり「6分の1×2分の1=12分の1」をもらえる権利を有しています。
この権利が侵されそうな場合には、すぐに遺留分侵害請求という手続きを行いましょう。
これにより、遺留分が侵害され、その分を余計にもらっている人に対して遺留分と実際の相続額との差額を金銭で支払うことを請求することができます。
遺留分請求手続き
遺留分を請求するには、まずは遺留分を侵害して余分に遺産をもらっている相手に直接請求します。
ただ、請求すればすんなりと遺留分を相手が支払ってくれるとは限りません。
当事者同士の話し合いで解決しない場合には、まずは遺留分請求の意思があることを内容証明郵便で送っておきましょう。
その後の調停や訴訟での証拠として有効なので書面として残しておくといいでしょう。
弁護士や司法書士などの法律の専門家に作成協力を依頼することをおすすめします。
話し合いで解決されない場合には家庭裁判所に調停を申し立てます。
この段階は争いではなくあくまで調停です。
調停委員が仲裁に入り、当事者たちの主張をじっくりと聴取したうえで和解のアドバイスを提示する場になります。
それでも解決しない場合には、遺留分請求者が原告となり民事裁判へと移行していきます。
遺留分請求の期間
遺留分は相続開始から10年経つと請求の権利が消滅するため、注意が必要です。
「被相続人が亡くなったことを知らなかった」「遺留分侵害の事実を知らなかった」といった事由があったとしても、相続開始から10年が経過してしまうと遺留分侵害額請求をすることはできなくなってしまいます。